【幼虫】7話〜彼女〜

「私はずっと応援してるから」 堕胎後も彼女は変わらなく優しくしてくれた。ずっと私の世話を焼いてくれた。そうして高校三年生になり進学が視野に入ってきた。 付き合い始めたときに私が何となく「専門学校にいって美容師になる」と話していた際に、彼女は…

【幼虫】6話〜水子〜

「ばあちゃん、彼女が妊娠した」 高校2年生の夏、彼女が妊娠した。私が泣きわめく中で、彼女は私の頭を擦っていた。私の涙は決して彼女に対してのものではない。私に対するものだった。その子供は私にとって不要だった。 私はずる賢く考えた。何とか私と彼女…

【幼虫】5話〜高校進学〜

「君、吹奏楽部に入らない?」 私は両親や祖父母が望んだ地元の進学校に無事入学した。倍率1倍ちょっとで同じ中学校の人間が5割以上受験するといった条件下で試験に落ちる訳はなかった。 ただ両親、祖父母などは皆泣いて喜んだ。合格発表の際に泣き崩れる友…

【幼虫】4話〜簡単なこと〜

「母さん、約束だからテレビ買ってね」 自分の部屋を手に入れるため学習に励んだ。中間、期末試験において学年で10位に入る程度はあっという間だった。簡単なことだった。こうして部屋を手に入れ、テレビやMDコンポ、プレイステーションなど次々と獲得してい…

【幼虫】3話~欲求~

「今週の土曜日、岡本君の家に行っていい?」 中学二年生になる頃には、部活友達の家によく遊びに行くようになり、プレイステーションや任天堂64に熱中した。友人宅にはゲームが何十本も、ゲームカードが何百枚もあり私の心をくすぐった。 一方で私は、自分…

【幼虫】2話~殻~

「岡本君、土曜日市営コートに行こう!」 中学に進学した私は、当時の流行りの某テニス漫画の影響を受けて硬式テニス部に入部した。喘息が完全には治っていないため、毎朝毎晩服薬し、朝練から放課後の練習まで汗を流した。今でもこんな私に良くしてくれる数…

【幼虫】1話~炎天下の発覚~

「…おい、祐介っ!頭に変な虫付いてるぞ!」 茹だるような8月の猛暑の中で、友人である健人の一言で、当時小学一年生だった私の心と体は一気に冷え込んだ。あれから20年経過したが、あの時の映像が今も私の頭からこびり付いて決して離れようとはしない。 幼…