【幼虫】6話〜水子〜

「ばあちゃん、彼女が妊娠した」

 高校2年生の夏、彼女が妊娠した。私が泣きわめく中で、彼女は私の頭を擦っていた。私の涙は決して彼女に対してのものではない。私に対するものだった。その子供は私にとって不要だった。

 私はずる賢く考えた。何とか私と彼女の両親にバレずに堕胎できないか。そこで、私は祖母に泣きついたのであった。事情を説明し「今後のために何とかしてほしい」と。祖母は困惑したが黙って頷いてくれた。

 夏休みの晴天、午前10時、祖母と彼女と私は三人で隣町の産婦人科を受診した。目的は決まっている。堕胎だ。街では子連れの母親が楽しそうに歩いていた。私は知り合いがいないかキョロキョロと周りを見渡していた。

 彼女と祖母はただしっかり前を向いていた。