【幼虫】1話~炎天下の発覚~

「…おい、祐介っ!頭に変な虫付いてるぞ!」
 
 茹だるような8月の猛暑の中で、友人である健人の一言で、当時小学一年生だった私の心と体は一気に冷え込んだ。あれから20年経過したが、あの時の映像が今も私の頭からこびり付いて決して離れようとはしない。

 幼少期から喘息とアレルギー性皮膚炎、それともう一つの病気を持ち、人一倍虚弱な体質だった。小学校時代は、野球やサッカーのクラブチームに入ったが、合宿中に喘息が発症し、早朝、チームを後にするなどして決して長続きはしなかった。

 その後、医師からの勧めでスイミングスクールに入り体を鍛えることになる。心肺機能が上がったからか、中学に入学した頃には、喘息は発症しなくなっていた。また、母親の勧めで地元の小さな塾に通い、人並みに勉強もした。

 中学生になった私は、生徒の多さに面食らった。過疎地域の私の小学校は全学年で50人弱の生徒数。比べて、中学校は一年生だけで300人。大した町では無かったが、某大手電機メーカーの工場が有り、それなりに人の多い隣町があったからだ。私の生まれた村から数㎞離れた場所にそんなに人がいるなんて、中学生になる前は思いもしなかった。

 体に加えて心も弱かった私は、無事やっていけるか実に不安であったが、その感情は直ぐに消え去ることとなった。