【幼虫】4話〜簡単なこと〜

「母さん、約束だからテレビ買ってね」

 自分の部屋を手に入れるため学習に励んだ。中間、期末試験において学年で10位に入る程度はあっという間だった。簡単なことだった。こうして部屋を手に入れ、テレビやMDコンポ、プレイステーションなど次々と獲得していった。

 こうして成績が上がっていく私に、親だけではなく祖父母も私に期待するようになっていった。味をしめた私は祖父母にも約束を取り付け、欲しいものを手にしていった。

 私は自身のコンプレックスにより人一倍、人の表情や感情を読み取ることに長けていたため、まわりを利用するためにうまく取り入った。私を取り巻く人間は私を好意的に見て評価した。私はただ自分の利益のために振る舞っているにも関わらず。

 こうして手に入れた部屋に友達を招きゲームをして遊び「普通の学生生活」を送っていった。

 しかし、幼虫は確実に存在していた。親、友人、誰にもそれを知られないように取り繕う私の心は、思春期に突入する頃には既に壊れていた。